中大規模木造建築のススメ

「木造」という選択肢

中大規模建築は従来建築基準法の規定により、あたりまえのように鉄骨造やコンクリート造が選択されてきました。阪神大震災を機に法改正がなされ性能規定化が導入されたことで、不可能であった規模の木造建築が可能になりました。鉄骨造やコンクリート造と同様、木造についても法的に構造計算体系が確立しています。平成22年「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行、規制緩和や技術基準が整備され、木造建築の可能な範囲が大きく広がりました。現在中大規模建築において「木造」を選択する大きなムーヴメントが起っています。

地震に強い木造

木造は地震に弱いのでは?という漠然とした不安を持たれることがあります。地震に強いか弱いか、これは言い換えれば「構造計算に基づき、きちんと施工されているか」ということです。地震に対して構造計算上強度不足であれば木造に限らず地震に弱い建物ということになります。現に鉄骨造でも鉄筋コンクリート造でも多くの建物が地震で倒壊しています。阪神大震災を契機に木構造の研究が進み、木造でも鉄骨造や鉄筋コンクリート造と同様に、構造計算により必要とする耐震性能を確保できるようになっています。

火災の時に命を守る

建築基準法では延焼防止、避難までの時間確保が求められます。これはどの構造種別でも同じで、設計段階で基準を満たせば木造でも鉄骨造や鉄筋コンクリート造と同様の性能を持っていることになります。構造規定と同様に防耐火についての技術基準も整備されてきています。

耐久性を確保する

鉄筋コンクリート造ではクラックや中性化の経年変化、鉄骨造では結露が起りやすく錆への対策が必要ですが、木造ではどうでしょうか。ヒノキは伐採方から200年ほど強度が増し、1000年後伐採時程度の強度にもどるといわれているので材料の強度的には問題ないでしょう。ただし木材は腐朽・蟻害について十分な配慮が必要です。防腐防蟻処理だけに頼らずできるだけ弱点を克服する設計上の工夫や点検・メンテナンスで早期に対処することで耐久性を保つことができます。

木造でつくる大空間

大断面集成材の架構ならもちろん可能ですが、在来軸組工法で一般流通材を利用したトラスや方杖などの架構で10mを越えるスパンでも難なく可能です。燃えしろ設計や防火区画などの基準をクリアすること、また規模・用途によっては特別な防耐火の規定もなく木造の架構を現しにすることも可能です。

コストを抑える

建設コストは鉄骨造や鉄筋コンクリート造にも言えることですが、設計方針により大きく変わるところです。中大規模建築だからといって、やみくもに大断面集成材や特殊な工法に走るのではなく、在来軸組工法を基本とし一般流通材の使用やプレカットが多用できる設計とすることでコストを抑えることができます。スパンが大きくなる部分も一般流通材を使ったトラスや方杖などの架構を使い、加工しやすく工夫をすれば地域の建設会社でも難なく調達・施工が可能となりコストダウンが図れます。また木造の場合は建物が軽くなるため基礎工事も、鉄やコンクリートに比べ軽易なものになります。

癒しの木質空間

木質空間の癒し効果は経験的にもよく語られますが、実際に、ある老人ホームインフルエンザやケガ、不眠の発生率が低いという結果が出ました。またある木造校舎の学校では風邪をひく生徒が少ないというデータもあります。木の調質機能や香りに含まれる抗菌性など様々な効果がこうした結果に結びついているのかもしれません。
(素晴らしい木の世界 改訂版/岐阜県木材協同組合連合会 より)

地域のチカラと環境への貢献

木を建築に使うことは他の構造に比べCO2削減による環境貢献度が高く、特に地域材利用では外国産材に比べ2倍の環境貢献度があるといわれています。また岐阜県では地域材の利用に対して助成制度があり適用可能な場合コスト検討に加算できます。そして何より地元の良質な木材を資源としての木を建築に活かすことで、地域の林業や木材産業をつなぎ地域の工務店が組織的に活躍していくことがこれからの時代であると考えています。

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